日本の証券アナリスト資格のモデルとなった、アメリカのCFAという資格は金融業界で高い評価を受けています。しかし合格に費やす資金や時間コストは、その後の収入に本当に見合うのでしょうか?英語を読みながら確かめてみましょう。
(英文は、”The CFA Exam’s Toughest Question: What’s the Payoff?”, Bloomberg.com 2016/6/8)
As financial workers from New Jersey to New Delhi sat this month for one of three grueling stages of the Chartered Financial Analyst exam, one question wasn't on the test: Is it worth it?
ニュージャージーからニューデリーに至るまで、金融期間で働く人々が今月(2016年6月)CFA試験の過酷な場に臨んだ。ところでこの試験に出題されなかった質問がある。CFA資格は取得する価値があるのだろうか?
(単語チェック)
financial:金融〈関係〉の
grueling:(精神的・肉体的に)非常に骨の折れる、極限まで疲れさせる
gruel(罰する、厳罰)から
punish(罰する)→ punishing(くたくたに疲れさせる、苛酷な)と同じ関係
Chartered Financial Analyst:CFA協会認定証券アナリスト
CFAは投資のプロフェッショナルを認定する国際資格で、1963年にアメリカで始まってから50年以上の歴史があります。今では国際的な資格になっていて、日本でもこの試験を受験することができます。
☆ 図り難い価値
The answer is elusive. Reliable estimates for how much the certification for valuing investments adds to a resume are virtually non-existent.
その答えは何とも言いようがない。投資を評価する資格にどのくらい価値があるかということについて、信頼できる推定をしたものは事実上存在しない。
(単語チェック)
elusive:理解しにくい、定義が難しい、とらえ所のない
elude(〜逃げる)から、elusiveは「うまく逃げる、捕まえにくい」
→とらえ所のない、見つけにくい
estimates:推定〈値〉
certification:認定書、証明書(certificate)
valuing:value(評価する)の現在分詞
add to:~を増加[増大]させる
His reluctance to pay rent will just add to his mother’s burden.
彼が家賃の支払いを渋れば、彼の母親の負担が増す。
resume:履歴書
日本語にもなっている「レジュメ」もこれですが、英語で「再開する」も同じresumeです。もともとはラテン語の「取り戻す」という意味の動詞までさかのぼるそうです。
また、イギリスでは履歴書のことはC.V.(curriculum vitae《カリキュラム・ヴァイティ》)と言います。
virtually:事実上
non-existent:存在しない
CFA資格は試験の難易度が高いため、金融における専門性の基準として認められています。特に国際的な職業につく時には競争上非常に有利となると言われてきました。しかし、アメリカのビジネススクールに比べれば安いとは言え、そのコストは決して小さなものではなく、それも試験に合格しなければ就職の武器にすることができません。
☆ 5人に4人が脱落
While nobody's saying it's worthless, test-takers who typically pour more than 300 hours into studying for each level and spend thousands of dollars on fees and materials do it despite harrowing statistics. Four out of five who start the process drop out.
それに価値がないと言う人はいないし、受験者は平均300時間を超える時間を各レベルの学習につぎ込み、受験料や教材費に1000ドル単位のお金を使うが、一方で次のような悲惨な数字がある。CFAに5人取り組めば4人が脱落しているのだ。
(単語チェック)
test-takers:受験者
pour:つぎ込む
harrowing:悲惨な、痛ましい
動詞 harrow(悩ます、苦しめる)から。
drop out:脱落する
CFA試験には、Level1からLevel3まで 3つのレベルがあり、それぞれのレベルに合格するには通常最低でも300時間の勉強が必要とされています。試験はレベル1(年2回)を除き年1回6月に行われます。
Level1と2はすべて選択式ですが、Level3は選択式と記述問題が半々の出題で、試験はすべて6時間にわたって行われます。合格率はLevel1と2が4割程度。そして2年以上かけてここまでを突破してきた人が受けるレベル3で5割前後のようです。
The odds of a big immediate payoff appear to be low. About 73 percent of job postings that specified compensation and included a reference to the CFA designation offered a salary below $100,000, according to research by recruiting company Phaidon International.
すぐに大きな見返りが得られる可能性は小さいように見える。人材あっせん会社ファイドン・インターナショナルによれば、報酬を明記してCFA資格に言及している求人(票)の約73%は、報酬が10万ドル(約1100万円)未満だ。
(単語チェック)
odds:可能性・見込み、勝ち目・勝算
競馬の「オッズ」と同じです。
The odds of the current governor being re-elected are rather slim.
現知事が再選される可能性はかなり低い。
The odds are with me.
私の方に分がありそうです。
payoff:見返り
給料・報酬の支払い(日)、給料(日)という意味もあります。
日本では「ペイオフ」というと金融機関に預けた預金を、その金融機関が破たんした時に保護する仕組みとの関連で使われていますね。これは、預金保険制度に基いて金融期間が一定金額までなら pay off(清算する)可能という制度です。
job posting:求人票
動詞postは「(公共の場所に案内を)貼る、掲示する」という意味です。
specify:明記する
compensation:報酬、賃金、給与
「補償、償い」という意味の他に、報酬という意味でもよく使われます。
What kind of compensation do you have in mind?
どのくらいの給与をお考えですか?
reference:言及
recruiting company:人材あっせん会社
この試験を運営する団体CFA Instituteは、CFA資格保有者の勤務先は登録するのですべて把握していますが、報酬などのデータは持っていません。CFAの幹部は「雇う側にとっても雇われる側とっても価値ある資格であることは確実だが、その価値を数値化するのは難しい」と言っています。
資格保有者を雇用している銀行・証券などの採用担当者によれば、採用の際に考慮することもあるけれど資格が必須ではないそうです。いったん採用されれば報酬は資格の有無でなく実績次第ということを考えると、取得までの苦労は本当にペイするのか、悩むところでしょうね
参考資料
https://www.english360.jp/7331/